化学進化説に関する考察や実験は、無機物から生命への進化を論じたものであり、1980年代まではそのような流れが支配的であった。1977年、カール・ウーズらによって第3のドメインとして古細菌が提案されると、古細菌を含めた好熱菌や極限環境微生物の研究が進行した。これらの研究から、生命の起源に近いとされる生物群の傾向が明らかになってきた。これにより生物進化から生命の起源を探るというアプローチが可能となった。
生命誕生以降の生物進化から生命の起源を探る試みは、化学進化とは異なり非常に多くの生命のサンプルを要する。多くのサンプルを用いながら、真正細菌、古細菌、真核生物の系統樹を描くことから、そうした試みが始まったと言える。進化系統樹を描く試みは従来、低分子のタンパク質アミノ酸配列(フェレドキシン、シトクロムcなど)を元にしたものが多かったが、DNAシークエンシング法やPCR法の確立などにより、より大きなデータを取り扱うことが可能になってきた。そうした生物の系統関係を論じるうえで最も一般的なものが16S rRNA系統解析である。また、コンピューターの計算能力の発展もその一翼をになった。
16S rRNA系統解析による3ドメインを含めた系統樹は、生命の起源が単系統であるか否かを論じるには当たらない無根系統樹である。しかしながら複数のDNA配列データを基に系統樹を作成すると系統樹に根をつけることに成功した(これは、生命の起源が単系統であることを系統樹上で意味する。こうした生物を共通祖先と言う)。そのような3ドメイン分子系統樹によると、共通祖先に近い原始的な生物は好熱性を示すものが多く見られることが判った。
例えば、真正細菌の根に一番近いのはAquifex属(超好熱性水素細菌)やThermotoga属(超好熱性水素細菌)である。そして古細菌は真正細菌に比べて系統樹の長さが短く(進化速度が遅く)原始的な性質を反映したが、根に近いものは好熱性のものにしめられていた(Thermococcus属、Thermoproteus属など)。また、好熱菌は概してゲノムサイズが小さい傾向にあり、これは共通祖先のゲノムサイズも小さいものであったことを示唆している。
3ドメイン分子系統樹の共通祖先はある時期に真正細菌および古細菌に分岐したことを示しているが、その祖先がいずれの性質を示していたのかと言う命題に対しては中立的である。真正細菌および古細菌は同じ原核生物であるものの、生体膜脂質の構造や転写、翻訳機構などの相違により、別系統の生物と言わざるを得ない。どのようにして、なぜ、共通祖先が真正細菌と古細菌に分かれたのかは今なお良く分かっておらず、今後の研究が待たれる。
なお、系統樹を用いた共通祖先を探る試みは定量的であるものの、別の遺伝子を使用すると時として真正細菌の枝の中に古細菌が入ったり、真核生物の枝の中に古細菌が入ったりと、統一的な見解が得られているわけではない。これは、遺伝子の水平伝播が盛んに起こっていると考えられている原核生物間の遺伝子のやり取りが影響していると考えられており、系統樹のみに依存すると本質を見誤ることを示唆している。系統樹を参照してください。
古細菌、真正細菌の細胞内共生説、原始生命体のゲノムサイズや性質については原始生命体の項を参照してください。
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